STOD(Screening Tool for the classification of Occupational Dysfunction)とは,精神障害領域の作業療法場面でクライエントの作業機能障害とその種類について簡便に評価を行うための評価尺度です.
現在の精神医療は入院医療から地域生活中心へと方向の転換期を迎えています.さらに長期入院中のクライエントに対する社会復帰にむけたアプローチも重要とされ,生活支援を始めとする包括的支援が支援者には求められています.
STODは精神疾患を有するクライエントが抱える生活のしづらさ(作業機能障害)について他者評価を行うことを目的に開発された評価尺度です.STODを用いることでクライエントが抱える生活のしづらさの特性を簡易に把握することができます.さらに,その状態に応じた支援方法が明らかになります.その結果,より適切な生活支援が可能になることが期待されます.
最近では作業機能障害とその種類に応じた評価と介入の効果も示されてきています.
OBP2.0とは
OBP2.0とは作業療法の専門性の発揮と,チームワークのマネジメントを行う理論です.専門性の発揮では作業療法のポテンシャルを引き出すために作業機能障害の種類を評価し介入を行います.さらに作業療法介入を行うにあたって生じる信念対立(疑いの余地のない信念が矛盾した状態で生じる確執)の解明を目指す技術として信念対立解明アプローチを用いることで多職種連携を図ります.
作業機能障害とは、生活行為を適切にやり遂げられない状態をさします。生活行為とは、日常の身のまわりのこと、家事などの生活を維持するためのこと、仕事や趣味、余暇活動などの行為すべてが含まれます。健康でいきいきとした暮らしを送るにはこれらの生活行為が適切に行われていることが大切です。反対に、これらの生活行為がうまく行えていない時(作業機能障害の時)は不健康で、ストレスなどが高まるといわれています。
STODは以下の4種類で作業機能障害をとらえます。
Q「使用に許可はいりますか?」
A いいえ
ご自由にご活用ください.(尺度内容の無断変更などはご遠慮ください)
Q「精神科以外でも使えますか?」
A 現在調査中です.
STODは精神科障害領域での使用を主眼に開発しました.身体障害領域での転用については現在調査中です.
一方で,すでに身体障害領域で使用されている事例報告も頂いています.
クライエントの作業機能障害についての理解の一助になればご利用いただいても結構です.
Q「CAODと異なる結果が出た時はどう解釈すればいいか」
A CAODはクライエントの捉え方を表現し,STODはセラピストの捉え方を表現します.
そのために,それぞれ異なる結果がでてくることがあります.
この場合,どちらの結果が正解・不正解というのではなく,双方の捉え方で異なっている部分があるという理解をしてください.
作業機能障害以外でもこうした場面は作業療法の中では珍しくないことかと思います.
双方の結果を治療のコミュニケーションにご活用いただき,Shear Decision Making(SDM)を行なってください.
Q「入浴,調理の項目など一部にかなり具体的な項目がある.それ以外の作業は評価しなくてもいいのか?」「なぜこの項目なのか?」
A 項目の背後にある潜在的な特性を評価に使用しています.
STODは項目反応理論という新テスト理論を用いています.
従来のテスト理論であれば,その項目に該当したorしなかった(正解or不正解)をカウントしてその合計点で結果を算出していました.
つまり,項目の内容にテストの結果が完全に依存していることになります.(別の項目に変えると当然結果も異なるものになります)
こうした尺度は様々な限界が指摘されています.(詳しくは清書をご覧ください)
一方で,STODが評価したいものは各項目についてのパフォーマンス状態ではなく,あくまでも「作業機能障害の状態」です.
そこで各項目の背後にある潜在的な特性から作業機能障害の状態を導き出しています.
具体的にいうと,自由に入浴ができる環境があるorない ことが重要な情報ではなく,自由に入浴できない環境にある場合,
その背後には多にして自由に作業に取り組めない環境(作業剥奪)が隠れていることを暗示していることに注目しています.
こうして複数の項目を重ねていくことで作業機能障害の実態を明らかにし結果を導いています.
こうした項目の分析などの結果,STODは作業機能障害を評価するのに適切な14項目で構成されました.
Q「作業療法士以外でも採点可能ですか?」
A クライエントの生活を把握する人であればご使用いただけます.
作業療法士以外にもクライエントの生活を支援する専門家が多数おられます.
こうした方々は作業療法士同様にクライエントの生活について理解されており,作業療法士同様に評価が可能と考えています.