年刊ブログが突然に3部作でお届けしたシリーズも最終話です.
長編にお付き合い頂きありがとうございます.
最後は共起ネットワーク分析を通してみえてきたことです.
共起ネットワーク分析の簡単な説明についてはこちらをご覧ください.https://khcoder.net/scr_r.html#netg
共起ネットワークの中にはいくつかの種類がありますが今回は媒介中心性に注目しました.
媒介中心性を調べると,
①どの言葉とどの言葉が似た使われ方をしているか(関係性の強弱),
②その中でデータ全体的にはどのようなネットワークが構成されているか(全体との関連性)
③そのネットワークでよく中心的概念としてあつかわれているのは何か(中心的概念)
が見えてきます.
つまり今回でいうと,
「精神領域の作業療法研究で中心的に用いられている概念は何か」を明らかにする分析方法です.
結果はこんな感じです.
中心的概念は「精神」「障害」「認知」
色の濃さは中心性の強さ,丸の大きさは出現回数の多さ,実線は概念同士の繋がり方を表しています.
そうすると「精神」,「障害」,「認知」という言葉は媒介中心性が高い(中心的に用いられている)と解釈できます.
ちなみに,世界作業療法士連盟の声明には「作業」が作業療法の中心的関心領域と明記されています.
このあとにkey wordの分析についても触れますが,タイトルとkey word双方の結果をみると
現状の学会の傾向としては,作業的側面よりも医学的側面に関心が向いているのかもしれません.
注)作業療法研究にはどちらの視点も重要なので,この結果は良いor悪いという意味ではありません.
なお共起ネットワークの結果からは様々な解釈が可能です.
分析チームの中でもここには書ききれない色々な解釈がでてきました.
ぜひ,みなさんなりの解釈からも今の作業療法研究を分析していただけたらと思います.
Key wordも分析してみた
学会の抄録には各演題3つまでのkey wordが選択されています.
key wordはその研究を端的に表現する用語(研究の重要概念)が示されています.
このkey wordについても同じように媒介中心性を描いてみました.
結果はこんな感じ.
key wordの中心性は「精神科作業療法」と「リカバリー」
ここにきて「リカバリー」がでてきました.
リカバリーは精神障害リハビリテーションにおいて超重要概念で,これを中心的概念として研究と実践がなされていくのは非常に重要です.
今後もリカバリーに貢献する研究と実践が豊かになるといいなと思います.
近年の精神科作業療法研究の中心的概念は「精神障害」「認知」「リカバリー」
今回は共起ネットワークの媒介中心性をもとに,精神領域の作業療法研究で中心的に扱われている概念について調べてみました.
共起ネットワークの解釈は結構難しいので書いた解釈以外にも様々な解釈が可能です.
ぜひ,皆さんの日頃の肌感覚などとも照らし合わせながら読んで頂けると幸いです.
最後になりましたが,今回の企画で一緒に準備してテキストマイニングでのデータ入力(これが結構大変...)にもご協力頂いた松岡さん,川口さんありがとうございました!
最後まで読んでいただきありがとうございます.