Part2は精神領域の研究テーマについて書きたいと思います.
ここからの分析はテキストマイニングという質的データに特化した分析方法を用いて解析を行いました.
この分析手法はコンピュータで質的データ(文字データ)を扱うことが特徴で,
今回のような300以上のデータについても,
言葉の出現の頻度,共出現の相関,出現傾向,時系列などを分析できるメリットをもっています.
テキストマイングについて https://it-trend.jp/textmining/article/explain
分析には無料のKHcorderを使用しました.https://khcoder.net/
どんな言葉が使われているの?
最初は頻出語句の確認です.
タイトルによく使われていた語句はこんな感じです.
Key wordはこんな感じです.
精神領域の研究として納得の語句が上位をしめています.
前回のブログで紹介した論文の動向では,研究対象が統合失調症以外に広がってきているといわれていましたが,学会ではまだ統合失調症に関する研究が圧倒的に多いようです.
作業療法白書でも最も対象にすることの多い疾患は統合失調症とされているので臨床の実態に対応した結果に思いました.
認知機能障害に関する演題は論文同様,学会でも多く発表されているようです.
テキストマイニングでは,こうして出現語句を確認した後に本格的な分析にうつります.
今回のブログではクラスター分析の結果をみていきます.
クラスター分析は,語句の使用パターンから類似したグループ分けを機械的に行う方法です.
つまり,精神科作業療法の研究のテーマをざっくりグループわけして,どんなテーマが主に実施されているかをみていきます.
まずはドンと結果を.
8つのグループにわけられました.
色別でグループが示されています.
さらにグループが近いほど近しい概念を示しています.
一つずつグループをみていくと
1.心理教育
従来からの心理教育に加え,近年IMRに関する研究なども増えてきています.
そうしたアプローチを用いた研究で一群が構成されています.
2.急性期治療
入院の短縮化が進む中で急性期治療に関する研究も一群を構成しています.
さらに上述の心理教育とも比較的近い概念として位置づけられているのがわかります.
3.長期入院患者の退院支援
長期入院患者の地域移行支援は国も掲げる重要テーマです.
作業療法研究でも一群を構成しています.
タイトルでも「長期」というwordは6番目に多く使われている結果からも,作業療法研究でよく扱われているテーマであることがわかります.
4.デイケア,集団と自己
デイケアや集団プログラムが個人にどういう影響を与えているかについて検討している一群と考えます.
精神科作業療法の特徴の一つは「集団」です.
集団の治療効果を最大限に引き出し個人に還元するためにもこうした研究はとても大切だと思います.
5.就労支援
「就労支援」はkey wordでもトップ5に入っています.
この群の研究が精神領域でよくなされていることがわかります.
当事者のデマンド調査でも「就労」は常に上位に入る作業です.
作業療法はこうしたニーズに貢献できる実践であることが研究を通して明らかにされつつあると考えます.
6.統合失調症と認知機能のリハビリテーション
論文の傾向でもいわれていましたが脳科学の発展に伴い認知機能障害への介入が学会でも多く報告されています.
NEARやSCITなどの支援技法の活用も進んでいます.
こうした技法をうまく使いながら対象者の作業機能障害の改善に貢献していけるといいなと思います.
7.うつ病と認知行動療法
図からは「うつ病と行動療法」として読み取れますが,もとのデータに帰ると「認知行動療法」の文脈で使用されていました.
(「認知」は上述の認知リハにもつかわれているので,分析結果はその影響をうけていると思います)
認知行動療法として括られていますがその報告は,第3世代(マインドフルネス)まで含めて様々な技法が作業療法に用いられていました.
8.地域生活,社会参加
退院後の社会参加に関する研究が一群を構成しています.
訪問看護で働く作業療法士も年々増えてきているのでこの類の研究は今後も増えてくると思います.
Key wordでも同様のクラスター分析をしてみましたが,得られた結果は同じ傾向だったのでここでは省略したいと思います.
お伝えしたように,今の精神科作業療法研究は主に8大トピックで研究が展開しているようです.
これらの結果を鑑みて,自分の研究の位置付けや今後の作業療法研究が向かう世界などを考えるのもいいかもしれませんね.
次回は別の分析(共起ネットワーク)から見えてきた分析結果についてお知らせします.
共起ネットワークを使うことで,作業療法士はどんな概念を研究のコアにおいているのかがみえてきました.
最後まで読んで頂きありがとうございます.